「チカップ美恵子の世界」‐カムイにいだかれたアイヌの文様
ブログを始めて7か月、手芸の話もチラホラ書くようになってからずっと温めていた、と言うかいつか紹介しようと思ってたのがアイヌの伝統的刺繍デザインの作品を数多く残した、チカップ美恵子さん(1948~2010)の本です。
<鶴の首の様にも見える印象的なデザイン>
私は特にアイヌ文化に見識がある訳ではないのですが、上の画像は長年私が愛用している品で、チカップ美恵子さんデザインの刺繍品です。1990年代の初頭から、私はワールドミュージックという、非西欧圏(東西冷戦の終結以前だったためこう言われてました)の音楽や文化にもっと触れよう、というムーヴメントに浸かっていました。トランシルヴァニアやバルカン諸国等、旧東欧のロマ(ジプシー)音楽や踊りにハマったのも、その流れだった訳ですが、丁度1993年が「世界先住民年」だった事から、アイヌ文化の展覧会にも足を運んだりしました。
<ベルリン、ライプツィヒの博物館が所有するコレクションの展覧会チラシ>
そんな折、あるイベントで知り合った女性から頂いたのが、写真の品だったのです。その女性との交友は途絶えてしまいましたが、私はいつもこの品を見る度に、「この文様にはどんな意味があるのかしら?」と思っていました。そして、最近になって下記の本の存在を知ったのです。
チカップ美恵子の世界―アイヌ文様刺繍と詩作品集 (2011/09/07) チカップ 美恵子、植村 佳弘 他 商品詳細を見る |
この本の序文に書かれていた、アイヌの文様の意味合いを読んだら、益々興味が湧いてきました。簡単に説明すると、アイヌの文様は、緩やかな曲線(モレウ)と、棘(アイウシ)から出来ていて、モレウは水を表現している。水とは天と大地を循環する永遠のカムイの象徴でもある。一方の棘は、人を守る為、魔除けの意味を持っている。そんな祈りが込められている模様を見てたら、何かカムイに守られているような気持ちになるじゃないですか。この本にはチカップ美恵子さんの作品の写真だけでなく、詩も掲載されていて、アイヌの自然信仰に根差した暮らしを垣間見る事が出来ます。
私は、刺繍はイマイチ自信がないのですが、トモちんや自分の持ち物にアイヌの文様を刺繍してみたいな、と思いました。試しに真似て作ってみたのですが、何か全然違うなー、、。
残念ながら、この本には技術的説明が一切ないので、どうしたもんかと思ってたら、こんな本も見つけました。
アイヌ刺しゅう入門 (チヂリ編) (2008/10/25) 津田 命子 商品詳細を見る |
まだ、パラパラと見てみただけですが、非常にシステマティックに出来ているようです。クロスステッチだけかと思ってたけど、コーチングステッチに似た刺し方もしてるようで、なるほどそれで棘の部分が出来るのね、、、等々、ちゃんと読んで勉強しようと思います。何か良いのが出来たら、いつか紹介したいです。
さて、手芸と言えば、私は手芸研究家・谷崎聖子さんのブログ「トランシルヴァニアへの扉」を愛読しています。トランシルヴァニアが自分の若い頃に訪れた場所、という思い入れもさることながら、手仕事の素晴らしさ、文化の継承、そして人と人との繋がりを考えさせられる記事が沢山あります。特に印象的だった記事はこちら。
カロタセグ地方手芸の旅(中)-トランシルヴァニアへの扉
カロタセグ地方は、
19世紀はじめにフォークアートの研究で一躍注目を集めたあと、
何人もの女性たちの手でその文化が守られてきた。
ジャルマティ婦人は、「カロタセグの偉大な夫人」と讃えられる人物で、
国内外のさまざまな博覧会に運び、カロタセグの手芸を有名にした。
その後もその意思をうけついで収集、紹介などをした女性たちがいたが、
このシンコー・カタリンもその中のひとりである。
「作り手の創作性がなければ、手芸品の価値はない」的な、作り手の気持ちの大切さは、チカップ美恵子さんの本にも感じられたものでした。私自身は何に於いても専門的ではありませんが、こうした「ハートに纏わる話」が大好きなのです。いつも記事の中で話が飛びまくりですが、そんな中でも人の興味を広げて、繋げていく話が書けたらな、と何時も思っています。
そんな訳で、最後に話は手芸から飛びますが、クリスマスシーズンになると何故か聴きたくなる曲を紹介。
クリスマスの歌ではありませんが、「人の声の温もりと力強さ、美しさ」を感じ、厳かな気持ちにもさせてくれるブルガリアン・ヴォイス。昔、テレビCMにも使用されましたね。
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無題
トランシルヴァニアを通じて、こうしてご縁があったことをうれしく思います。
アイヌの刺しゅうの世界、
チェーンステッチで直線の尖りを表すところが面白いですね。
文字をもたないアイヌたちは、こうした文様の中で生きてきたことが感じられます。
トランシルヴァニアの農村の中に、そうした古い時代の欠片をできるだけたくさん集めたいと思います。
いつか日本へ里帰りしたときには、お会いできたらうれしいです。
ご家族の皆様にとって、素晴らしい一年でありますように。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。