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yuccalina

Author:yuccalina
自閉症の息子(14才)と、エンジニアの夫との3人暮らしのアラフィー主婦です。45才でヨガ指導者スクールを卒業し、現在地元で極々細やかな教室を開催。

一方、トランシルヴァニア(カロタセグ地方)の伝統刺繍、イーラーショシュのステッチを用いた雑貨『Yuccalina Erdő=ユッカリーナ・エルドゥ』の制作も行っています。

ミンネ・ギャラリーにて作品展示中。

ブログでは主にハンドメイド、ガーデニングに加え、10代から親しんできたロック音楽に、映画、本等について綴っています。

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ユッカリーナのヨガ的雑記帳


2011/09/12 08:57 yuccalina

彼の名はシド・バレット―その世界観の奥底にあったもの

ピンク・フロイドの名前を久しぶりに思い出したキッカケは、今年4月のフィギュア世界選手権、アルトゥール・ガチンスキー選手(ロシア)のショートプログラムだった。最後がレジの音でチーン!の「マネー」って曲で終わるやつだが、フロイドは7月に他界したローラン・プティ氏のバレエ作品にもなったくらいだから、フィギュアとの距離も近いんだろう。しかし、私にとってのフロイドとは、ガチンスキーのショートプログラムにも、プティのピンク・フロイド・バレエにも出てこない。ファーストアルバム「夜明けの口笛吹き」で、その殆どの曲を作詞作曲し歌ったシド・バレットこそが、私にとってのピンクフロイドなのだ。彼が抜けてから、世界的モンスターバンドに成長したグループの事ではない。

夜明けの口笛吹き夜明けの口笛吹き
(2000/07/26)
ピンク・フロイド

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前にも書いたけど、私はプログレが苦手。シドに捧げられたという曲「狂ったダイヤモンド」が収められたアルバム「あなたがここにいてほしい」は持ってるものの、頻繁に聴きたいとは思わない。しかし、「夜明けの」とシドの3枚のソロ・アルバム「帽子が笑う不気味に」「その名はバレット」「オペル」は、一度取り付かれたら離れられない、不思議な魅力に溢れている。

帽子が笑う不気味に帽子が笑う不気味に
(2006/09/29)
シド・バレット

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その名はバレットその名はバレット
(2010/11/17)
シド・バレット

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オペルオペル
(2010/11/17)
シド・バレット

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最初の2枚(共に1970年発表)は後追いで、1500円位の廉価盤のレコードを買ったが、1988年の「オペル」は発売を待ち焦がれながらCDを入手した。シドが精神を病んで隠居生活に入ってから20年近い歳月を経て、熱烈な信奉者達の力により世に送り出された、未発表曲集なのだ。


さて、何故今さらシド・バレットの話なのかというと、2006年糖尿病の合併症で亡くなった彼(享年60才)の姉の発言を、つい最近知ったからである。それは、シドがアスペルガー症候群であった事と、共感覚であった事だ。共感覚について、私にはテレビで得た情報しかないが、五感がキッチリ分化されずに脳が発達した為に起きる。例えば、形を見て味を感じる(視覚と味覚)、形を見て臭いを感じる(視覚と嗅覚)とか、音を聴いて色を感じる(聴覚と視覚)等々人によって様々なパターンの混乱である。彼女が「弟の精神病は誇張して報道された」と感じたのは、彼の障害と世界観を理解していたからなんだろう。

60年代の後期、サイケデリックファッションに身を包んだカーリーヘアの美少年シド・バレットは、元々内向的な性格であったが、ファーストアルバムとシングル「Arnold Layne」「See Emily Play」の成功でアイドル的人気も得た。そのストレスと、以前から常用していたドラッグ(LSDは当時は合法)の過剰摂取によりさらに精神を病んだ、というのがこれまでの定説であった。しかし、アスペルガーと共感覚の研究、認識及び対処法が、現在よりも未熟だった事が、病を重くした原因の1つと言えなくないか?生まれた時代が違ってたら、とか今更言っても仕方ないんだけどさ。ともあれ姉の「アスペルガーと共感覚」発言は、ドラッグの影響を全否定できなくても、「ただ薬漬けで狂った男の音楽」という烙印を消してくれたと思う。そして、自閉症の息子を持つ私は、「シドの世界観を共有する資格をもらったみたい」と勝手に嬉しがってしまった。世間から狂気の天才と歌われたシドも、家族からすれば、コミュニケーション下手で周囲に理解されにくい、ちょっと変わった子だったのかも、とか考えると、今まで別世界にいたシドとの距離が、グッと近くなった気がする。

こうしてみると、彼の書いた歌の題材も、色々と想像できて何だか楽しいぞー。Terrapin(カメ)だのOctopus(タコ)だの、ロックにはおよそ相応しくないタイトルに、私達凡人は「カメやタコは何かの比喩」と安易に考えがちだが、もしやシドはカメやタコの形をみて、こーゆー音を感じてたのかもしれんのだ。そして、彼の曲で特徴的な、リズムやメロディに時々生じる歪みも、どこか別の感覚と共鳴していたからなのかもしれない。その歪みを気持ち悪いという向きは多いものの、逆に私みたいに「ゾックゾクしてたまらん。やめられまへんなー(明石家さんま)」と感じる人も決して少なくないのだ。まっこと、感覚とは面白きものよのう。ただ、シドが何に音を感じたのか、音で何を感じたのかを、彼の口から聞く事が出来ないのは非常に残念なんだけど。



ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンにジム・モリソン、そして今年他界したエイミー・ワインハウスといった若く(何故か皆27才)して亡くなったアーティスト達とは違い、長い間病気(鬱病、過食、糖尿病による眼疾患等々)と戦いながら、60才でこの世を去ったシド・バレット。表舞台にいたのはたった数年間で生きる伝説となり、後の人生をひっそりと倹しく生き抜いた彼を、私はただただいとおしく思う。陳腐な言い方だけど、肉体は滅びても、彼の作品はこれからも輝き続け、数多のアーティスト達の霊感の源になるんだろう。

<カヴァーでは私的に5本の指に入るPモデルの「Bike」は日本語の歌詞で、シドの世界を踏襲してるのが凄い>


<80年代のポストパンクバンド、TV Personalitiesがシドに捧げた曲>



音楽的解説してくれてる方がいました。
ロック好きの行き着く先は、、「Syd Barrett-Madcap Laughs」
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タグ: シド・バレット 自閉症 発達障害 イギリス 60年代

テーマ:アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム - ジャンル:心と身体

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Comment
こんにちは!
当時の情報としてはドラッグの過剰摂取による、
精神的変調くらいなことしか、わからなかったですね。
シド・バレットがアスペルガー症候群で、共感覚だったとは!
伝説が肥大化したというか先走りしてしまった、
典型的な例だと思います。
もうそろそろ、本当のシド・バレットについて書かれた、
しっかりした本が出てもよいのに、と思います。
> もうそろそろ、本当のシド・バレットについて書かれた、
> しっかりした本が出てもよいのに、と思います。

そうですね。彼について脳科学的に解明されるべき部分は、決して少なくないと思っていますし、遺族の口から語られる彼についてもっと知りたいところです。

話はちょっと変わりますけど、オジー・オズボーンが遺伝子検査を希望した話を思い出しました。逆にドラッグやアルコールの過剰摂取、依存症を乗り越えて生き延びた彼の遺伝子には、何かあるんじゃないか?と期待されているそうです。
yuccalinaさん、こんばんは。

ぼくもフロイドで最も聞くアルバムはシド在籍時の2枚がほとんで、ソロ作も未発表曲集含め愛聴し続けています。残した曲は数えるほどしかありませんが、本人が何のプロモーションもせず家にいたにもかかわらずこれだけ語られ続けるのは他には例を見ませんね。

共感覚については「カエルの声はなぜ青いのか?」という学術的な本を1度読んだだけなのですが、これをもとに心当たりのある人に聞くと、意外とその持ち主だったりします。本人には自覚がないことが多いようですね。そして、シド自身「タコ」や「カメ」に捧ぐ歌を歌っているのも含め、直感で詞や音を奏でていたのだと思います。シドのかき鳴らすギターのコードは独自のもので、コピーするのがかなり難しいとも聞きます。既存の歌詞や音楽理論にはとらわれていなかったのかもしれません。

もう10年近く前ですが、地元地域のボランティアで発達障害を持つお子さんの家へ遊びに行ったところ、私の書いた人の絵の下にグルグル大きな円を何度も描き、何を描いてるのかと思ったら、それを遠くから見ると人の足元から大きな影が伸びていることに気づき驚いたころがありました。シドも7歳にして「夏休み」というテーマで、水着の女性に溶けたアイスが滴る絵を描いたそうです。共感覚と発達障害はどちらも脳に関係があると言われていますが、芸術や発明とも何らかの接点があるのかも…。

リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?こちらは音楽関連ばかりなのですが、もしよろしければで大丈夫です!
興味深いお話、ありがとうございます。
やはり、発達障害の脳は芸術的才能と被るパターンが、結構多いのかもしれませんね。近年の研究では、ダヴィンチやモーツアルトもADHDだったのではないか、とか言われてますし。シド・バレットも、脳科学的に研究される時代がくるかも?

> リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?こちらは音楽関連ばかりなのですが、もしよろしければで大丈夫です!
勿論OKです。早速リンク貼らせていただきましたので、よろしくお願いします。
yuccalinaさん、こんにちは。

最新記事からたどって、興味深く読ませていただきました。

Pink Floydがビッグ・ネームになり、そのフロイドを作った男としていたずらに神格化されてしまったのが、シドにとっての悲劇の始まりだったのかも知れません。

シドの人となり、そしてシドの心を理解しようとすることなく、興味本位でしか語られてこなかったのは心が痛みます。

改めて彼の作品を聞いてみたくなりました。ありがとうございます。
> yuccalinaさん、こんにちは。
>
> 最新記事からたどって、興味深く読ませていただきました。
ticaさんへ

お読み頂いてありがとうございます。

私はシドのアスペルガーと共感覚の事を知ってから、ネット上での話題、評価を色々と見てきたのですが、どうしても”薬による精神分裂で”が枕詞のように付いているのに違和感を感じたのです。

勿論薬による不安定があったのは確かでしょうが、彼はドラッグの力だけで曲を作ってた訳でないでしょうし、それ以前のベースとなった感覚について、もっと知りたいなあと思っています。

子供のようにピュアで特異な能力の持ち主だった筈。その辺りに切り込んで行けたらなと思っています。


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