たかが服されど服~『Miyake Issey展・三宅一生の仕事』
あれは一年ほど前、NHK BSプレミアムで三宅一生氏のドキュメンタリーが放送されました。リアリティ・ラボというプロジェクトチームで製作している『132 5.』の現場を公開しつつ、一生氏のこれまでの歩みを伝える、素晴らしい内容でした。
なので、この『Miyake Issey展』は絶対に見逃すまい!と思っていたのですが、20日の金曜日に国立新美術館で見てまいりました。


こちらのサイトでは展覧会の様子が見られる動画が公開されています。
Miyake Issey展 三宅一生の仕事
三宅一生と言えば、私は16年前に東京都現代美術館での『Making Things展』も見ていたのですが、

今回はちょっと違ったモチベーションがありました。図々しいかもしれませんが、物作りの末端に足を踏み入れた私にとって、非常に刺激的なことばかりで、見た後にまた何か作りたくなるような、ワクワクする内容でありました。ちなみにチラシのデザインに使われているのは、青×赤のプリーツ服と、黒×ゴールドの折り紙服132 5.。

先述のドキュメンタリーを見ていた時からずっと思っていたのですが、一生氏の服作りは非常に哲学的です。
「我々が作ろうとしているのは、ファッションでもモードでもなく、唯々衣服の世界です」
「たかが服なんだから」
と客観視しつつ、
「それでもデザインの力を信じてやっている」
と言う。されど服、なのですね。常に対話をしながら、真実を追求している、求道者であると感じました。
対話する相手は、ある時は素材であり、自然であり、またある時は最新テクノロジーであったりもする。日本の伝統的な物作りの技術(刺し子ジャケットや和紙の服等)に敬意を示しつつ、最先端の技術(再生ポリエステルのプリーツ、A POC等)も取り入れる。それらを調和させて生まれたものは、驚きや喜びに満ちているのです。
また、一生氏は常に
「体と布との絶妙な関係性」
を求めていて間(ま)を大切にする、日本の独特な文化を体現しているのかもしれません。こうも語っておりました。
「日本の素材を使うようになって、質素は美しいと感じるようになった」
そう、わびさびに代表される日本人の美意識を、とても大切されているのですね。今回展覧会のタイトルが、Issey MiyakeからMiyake Isseyに変わってるのも、その意味があるのかも?
かどうかは分かりませんが、一生氏が常に「我々が、、」と語っていたのも印象的でした。決して独りよがりでなく、共同作業から生まれるものを大切にされている。日本各地を巡っては、伝統的な素材を沢山使われてきて、日本の職人の素晴らしさについてもこう語ってましたっけ。
「直ぐに”出来ません”とは絶対に言わない。諦めないし、逆に”こんなのはどうですか?”とアイディアを出してくる」
と、132.5の縫製をしている方々を褒めてたのをよく覚えております。単なる下請けではなく、一緒に物作りをするチームの仲間であると。そうした人と人との対話も大切にされているのですね。
さて、そんな三宅一生氏のお仕事展は、70年代の作品から、今や日本のファッションにすっかり浸透したプリーツ服に、その折りの発展形となる132 5.と、歴史に沿って並んでいました。グラフィックデザイナー田中一光氏とコラボしたプリーツものの隣には、プリーツ加工する機械が据えられ、機械の動きが良く分かるようなビデオも流されていました。また、132 5.シリーズには、ミニチュアのドレスをボディに着付けするコーナーもあったり、展示の仕方も面白く、とても楽しい展覧会でした。
そうした見せ方への拘りは、用意されていた子供用のパンフレット(無料)を見ても良くわかりました。上の写真の右から2番目がそのパンフです。

ちなみにこのパンフの最後には、自分で服をデザイン出来るページがありましたよ。2冊貰っておけば良かったなあ。やってみたいけど、切り取るのがもったいなくて~~!
こう言った心遣いにも、日本の物作りの素晴らしさとデザインの楽しさを次世代に伝えていきたい、という強い意志が感じられますね。
例え服飾やデザインに関わっていなくとも、この展覧会から学べることは沢山あると思います。6月13日(月)までと会期は残り少なくなっておりますが、是非沢山の方に見て頂きたいと思います。
お読み頂きありがとうございました。
↓宜しかったらポチお願い致しますm(__)m
なので、この『Miyake Issey展』は絶対に見逃すまい!と思っていたのですが、20日の金曜日に国立新美術館で見てまいりました。


こちらのサイトでは展覧会の様子が見られる動画が公開されています。
Miyake Issey展 三宅一生の仕事
三宅一生と言えば、私は16年前に東京都現代美術館での『Making Things展』も見ていたのですが、

今回はちょっと違ったモチベーションがありました。図々しいかもしれませんが、物作りの末端に足を踏み入れた私にとって、非常に刺激的なことばかりで、見た後にまた何か作りたくなるような、ワクワクする内容でありました。ちなみにチラシのデザインに使われているのは、青×赤のプリーツ服と、黒×ゴールドの折り紙服132 5.。

先述のドキュメンタリーを見ていた時からずっと思っていたのですが、一生氏の服作りは非常に哲学的です。
「我々が作ろうとしているのは、ファッションでもモードでもなく、唯々衣服の世界です」
「たかが服なんだから」
と客観視しつつ、
「それでもデザインの力を信じてやっている」
と言う。されど服、なのですね。常に対話をしながら、真実を追求している、求道者であると感じました。
対話する相手は、ある時は素材であり、自然であり、またある時は最新テクノロジーであったりもする。日本の伝統的な物作りの技術(刺し子ジャケットや和紙の服等)に敬意を示しつつ、最先端の技術(再生ポリエステルのプリーツ、A POC等)も取り入れる。それらを調和させて生まれたものは、驚きや喜びに満ちているのです。
また、一生氏は常に
「体と布との絶妙な関係性」
を求めていて間(ま)を大切にする、日本の独特な文化を体現しているのかもしれません。こうも語っておりました。
「日本の素材を使うようになって、質素は美しいと感じるようになった」
そう、わびさびに代表される日本人の美意識を、とても大切されているのですね。今回展覧会のタイトルが、Issey MiyakeからMiyake Isseyに変わってるのも、その意味があるのかも?
かどうかは分かりませんが、一生氏が常に「我々が、、」と語っていたのも印象的でした。決して独りよがりでなく、共同作業から生まれるものを大切にされている。日本各地を巡っては、伝統的な素材を沢山使われてきて、日本の職人の素晴らしさについてもこう語ってましたっけ。
「直ぐに”出来ません”とは絶対に言わない。諦めないし、逆に”こんなのはどうですか?”とアイディアを出してくる」
と、132.5の縫製をしている方々を褒めてたのをよく覚えております。単なる下請けではなく、一緒に物作りをするチームの仲間であると。そうした人と人との対話も大切にされているのですね。
さて、そんな三宅一生氏のお仕事展は、70年代の作品から、今や日本のファッションにすっかり浸透したプリーツ服に、その折りの発展形となる132 5.と、歴史に沿って並んでいました。グラフィックデザイナー田中一光氏とコラボしたプリーツものの隣には、プリーツ加工する機械が据えられ、機械の動きが良く分かるようなビデオも流されていました。また、132 5.シリーズには、ミニチュアのドレスをボディに着付けするコーナーもあったり、展示の仕方も面白く、とても楽しい展覧会でした。
そうした見せ方への拘りは、用意されていた子供用のパンフレット(無料)を見ても良くわかりました。上の写真の右から2番目がそのパンフです。

ちなみにこのパンフの最後には、自分で服をデザイン出来るページがありましたよ。2冊貰っておけば良かったなあ。やってみたいけど、切り取るのがもったいなくて~~!
こう言った心遣いにも、日本の物作りの素晴らしさとデザインの楽しさを次世代に伝えていきたい、という強い意志が感じられますね。
例え服飾やデザインに関わっていなくとも、この展覧会から学べることは沢山あると思います。6月13日(月)までと会期は残り少なくなっておりますが、是非沢山の方に見て頂きたいと思います。
お読み頂きありがとうございました。
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