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yuccalina

Author:yuccalina
自閉症の息子(14才)と、エンジニアの夫との3人暮らしのアラフィー主婦です。45才でヨガ指導者スクールを卒業し、現在地元で極々細やかな教室を開催。

一方、トランシルヴァニア(カロタセグ地方)の伝統刺繍、イーラーショシュのステッチを用いた雑貨『Yuccalina Erdő=ユッカリーナ・エルドゥ』の制作も行っています。

ミンネ・ギャラリーにて作品展示中。

ブログでは主にハンドメイド、ガーデニングに加え、10代から親しんできたロック音楽に、映画、本等について綴っています。

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ユッカリーナのヨガ的雑記帳


2015/12/21 15:10 yuccalina

『素敵なあなた』から『学生時代』と『美しき天然』を巡る越境音楽の話

浅田真央選手の今季ショートプログラム曲は『素敵なあなた』。



ジャズのスタンダードで有名らしいですが、私はジャズに疎く、曲についてよく知らなかったので、ちょっと調べてみることに。まず原題のBei Mir Bist Du Schonと言う、ドイツ語の様な字ヅラを見て、私のアンテナがビビビー、もしやイディッシュ語なのでは?と思い、作者のショロム・セクンダがあの『ドナドナ』も作ってたと知って、

やっぱりクレズマーだったんかーい?

と一気にテンションが上がっちゃった次第。クレズマーとわ簡単に説明すると、イディッシュ語(ドイツ語をベースにヘブライ語とスラブ系の語彙が混じった言語)を母語とするユダヤ人が、結婚式等で演奏する音楽。

なになに、ウィキペディアによると、セクンダは1894年ウクライナ出身で13歳で渡米、ってことはロシア革命期のポグロムを逃れてきた、映画『耳に残るは君の歌声』のお父さんと同じパターンですな。セクンダのwikiには幼少期の写真が使われてて、存命中に作曲家として脚光を浴びることはなかったことが伺え、それがまたクレズマーの物悲しい旋律と重なってしまいます。

んで、『素敵なあなた』は元々イディッシュ語のミュージカルの曲だったそうで、その後これまたユダヤ系のサミー・カーンが英語の歌詞を付けて、コーラスグループ、アンドリューシスターズの歌でレコーディングしアメリカでヒットしたと。で、更に面白いのは、サミー・カーンがレコーディングを考えるキッカケとなったのが、黒人デュオがこの曲をイディッシュ語で歌ってて、黒人の聴衆に受けてたから、と言うエピソードなんです。つまりそれは、黒人もイディッシュ語のミュージカル音楽を好んで聴いていたと。そう言やあ、レイ・チャールズも黒人の音楽じゃないカントリーも大好きだったと言ってたっけなー。そして、ユダヤ人も黒人歌手を意識していた。ウィキペディアのほんの数行の中に、私が興味津々の要素が詰まっていた訳です。

もう何度も書いてますが、アメリカ音楽における黒人とユダヤ人の関わりは、このブログの音楽記事の大きなテーマの一つなのでございます。

バート・バカラック
ジェリー・ゴフィン
キャロル・キング
ニール・セダカ
ニール・ダイアモンド

等々、黒人の歌手やコーラスグループに曲を提供してヒットを量産していたソングライターの殆どが、実はユダヤ系だったと知ったのは、結構最近でありますが、やはり、ジャズの時代にもやはり絡みがあったのね、とほくそえんだ訳です。

しかし、今回は黒人も云々の話は置いといて、クレズマーに焦点を当てて書こうと思います。何故かと言うと、最近こう言う本を買っちゃったんです。

中東欧音楽の回路―ロマ・クレズマー・20世紀の前衛(Amazon co.jp. 商品詳細)

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黒人とユダヤ人の音楽的関係を探る為には、ユダヤ人の音楽についてももっと知りたいなと思って買ってみたんです。まだ読んでる途中なんですが、ロシアを含め中欧、東欧の越境音楽、クレズマーやロマの音楽を巡る内容。楽譜が読めないワタクシは、音楽学的記述には今一ピンと来ないものの、興味深い話が盛り沢山。

その中で、ロシアやウクライナでのポグロムを逃れてアメリカに渡ったユダヤ人達が、ミュージカルや映画、そしてジャズの世界で活躍してった話も出てきました。先述のセクンダが、イディッシュ語のミュージカル曲を作っていた、と言うのは当時のニューヨークの住民は殆どユダヤ人であり、イディッシュ語が飛び交っていたんだろうな、と想像出来ますね。

と言うわけで、『素敵なあなた』のクレズマー版を、早速YouTubeで探してみました。こちらはフランスのバンドらしき、Groupe Klezmer Mariage Juif。



歌なしで短い演奏ですが、クラリネット、ヴァイオリン、アコーディオン、7弦ギターにベースと言う5人編成。

しかし、このスウィング感、何かジャンゴ・ラインハルトっぽくない?ジプシー・スウィングとイマイチ区別付かないなー、と思いつつ、ジプシー(ロマ)風バージョンも献策してみたら、こっちも色々ありますた。

カフェ・マヌーシュはイギリスを拠点に活躍するジプシージャズのバンドらしいです。



女性ヴォーカルが耳に心地良し。

そしてもう一つは、7弦ギター(V.Kolpalov)とヴァイオリン(A.Gips)のデュオ。練習風景を撮った映像らしく、ギターのコード演奏はテープを使ってるみたいですね。



ギタリストはルックスがロマっほいくて、名前はロシア風、ヴァイオリンのおじさんはユダヤ系?。有名なミュージシャンなのでしょうか?1分過ぎくらいから、ヴァイオリンがメロディラインを外れて、泣くようにうねったり、速弾きするのが、私的にはカフェ・マヌーシュよりもよりジプシーっぽく感じられます。かつて、みやこうせいの『カルパチアのミューズたち』の話でも触れましたが、東欧においてロマとユダヤ人の音楽家は一緒に活動することもあり、影響し合っていた話は、この『中東欧音楽の回路』にも出てきました。こうして聴き比べても、やはり通じるものがありますね。

そして、新大陸のディキシーランドジャズも、その延長線上にあるのでしょう。



弦楽器がバンジョーに変り、途中トランペット等のソロが入るのがジャズっぽいですが、スウィング感はクレズマーと変わってない気がします。私がこれを選んだ理由の一つに、途中『Puttin' On The Ritz』のフレーズが挟まれていたからです。はい、こちらも浅田真央ちゃんの使用曲(エキシビション)です。この曲を作ったアーヴィング・バーリン(1888~1989)もロシア(現ベラルーシ)出身のユダヤ系。作曲家としてはセクンダよりも成功した様で、『ホワイト・クリスマス』『ショーほど素敵な商売はない』等有名な曲も多数。

セクンダ、バーリン、そしてジョージ・ガーシュインもう同年代のユダヤ系作曲家ですが、こうしてみるとアメリカの音楽の土台は殆どユダヤ人が作った感じで、中東欧と繋がっていたんですね。そこから、ユダヤ人がアフリカ系の音楽的素質に気付いたことで、さらに豊かなものになって行ったのかも?

とか言う話を始めるとまた長くなるので、この辺にしておきますが、『中東欧音楽の回路』では、アメリカにクレズマーが渡って行ったのを”西回りルート”と呼び、もう一つ”東回りルート”を紹介していたんです。

ええ、その象徴が、この記事のタイトルにもなってる『学生時代』と『美しき天然』でして、ロシア~満州~上海~東京とユダヤの楽師が流れたのではないかと。満州の特にハルピンには、ロシア革命後に貴族のお抱え楽師が極東へ逃れて、ヨーロッパ音楽の種を蒔いた。クラッシックもポピュラーも、日本における西洋音楽は、満州経由で伝わったものの影響がとても大きかったんだそうです。日本人がクレズマーを聴いた時に、どこか懐かしく響くのは、いつの間にか日本の音楽に溶け込んでいたからかもしれませんね。

『学生時代』はペギー葉山のと言うよりは、私は学校の音楽の授業で習いました。どこか哀愁を帯びた旋律。確かにクレズマーっぽいです。今回YouTubeでクレズマー風カバーがないか探してみたんですが、残念ながら見つかりませんでした。まささんという方が原由子バージョンのカバーをしてて、それが一番雰囲気が近かったので、紹介しますね。



で、本書によれば、『学生時代』を作曲した平岡精二はジャズ・ミュージシャン。その叔父養一は木琴奏者で、アメリカで音楽修行し、ユダヤ系の音楽家ウラジーミル・ブレナーから指導を受けていた。『ロシアン・ジプシーメロディーズ』という曲の編曲をしていた。等と、クレズマーとの関わりがあったとか。『学生時代』はその平岡養一からの影響があるのではないか?

と、またまた私が大好きな話でテンション上がりますわ。

そして、もう一つ、私はサーカスの曲として認識していた『美しき天然』(または『天然の美』)は、ワルツ曲ですけど、確かに『ドナドナ』に近い雰囲気もありますねえ。こちらの曲は”くものすカルテット”というグループのが秀逸でした。



打楽器としてチンドンが使われてますね。そう言えば、チンドンって、ルーマニアのマラムレシュ地方のロマバンドが使ってる楽器と酷似してるんですよね。以前コチラの記事で紹介しましたので、興味のある方はどうぞ。

で、この”くものすカルテット”、これまでに何度も言及してきたサックス奏者、故・篠田正己さんと彼のバンド”コンポステラ”周辺の香りを感じまして、調べて見たらやっぱり関係してたみたい。コンポステラのメンバーだった中尾勘二さん(クラリネット)、関島岳郎さん(チューバ)のユニット”プチだおん”と共演している動画をハケーーン!曲はコンポステラのアルバム『一の知らせ』収録の『最初の記憶』(関島岳郎作曲)です。



この曲もきっと、大陸からやってきた音楽の影響の元に生まれた『美しき天然』や『学生時代』の流れを汲んでいるのでしょうね。

と言ったところで、かなり長尺になってしまいましたが、自分が心惹かれるメロディには、皆繋がりがあったと知って大興奮してしまったお話でした。この『中東欧音楽の回路』という本については、また色々と紹介して行きたいと思っております。



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タグ: 浅田真央 東欧 クレズマー ロマ ワールドミュージック

テーマ:ワールドミュージック - ジャンル:音楽

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Comment
yuccalina さま、こんにちは。

『素敵なあなた』から感じる哀愁には、こういう歴史や物語が隠れていたんですね。

クレズマーをキーワードに『学生時代』と『美しき天然』に繋がっていくところ、ワクワクしました。

きょうこさんへ

> 『素敵なあなた』から感じる哀愁には、こういう歴史や物語が隠れていたんですね。
>
> クレズマーをキーワードに『学生時代』と『美しき天然』に繋がっていくところ、ワクワクしました。

ありがとうございます。日本の音楽の中にも中東欧の要素が、国境を越えてやって来た音楽が根付いていることを知って、なるほどと思ったんです。アメリカのミュージカル音楽やスウィングジャズなど、これまであまり重要視してなかったんですが、今後はもっと色々聴いてみたいと思っています。


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