プロフィール

yuccalina

Author:yuccalina
自閉症の息子(14才)と、エンジニアの夫との3人暮らしのアラフィー主婦です。45才でヨガ指導者スクールを卒業し、現在地元で極々細やかな教室を開催。

一方、トランシルヴァニア(カロタセグ地方)の伝統刺繍、イーラーショシュのステッチを用いた雑貨『Yuccalina Erdő=ユッカリーナ・エルドゥ』の制作も行っています。

ミンネ・ギャラリーにて作品展示中。

ブログでは主にハンドメイド、ガーデニングに加え、10代から親しんできたロック音楽に、映画、本等について綴っています。

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ユッカリーナのヨガ的雑記帳


2015/11/02 09:33 yuccalina

映画『永遠のモータウン』~栄光の陰のヒストリー

以前、BBCドキュメンタリー『Dancing in the Street』で、モータウンレコードの事が詳しく紹介されていた件(記事はコチラ)を、更に掘り下げるべく取り上げたいのが、映画『永遠のモータウン』(原題 Standing in the Shadows of Motown 2002年 アメリカ)です。モータウンの歌手を陰で支えていたバックミュージシャン達、ファンクブラザーズを追ったドキュメンタリーです。



YouTubeにフル動画がありましたので、リンクだけ貼っておきますね。字幕無しで、英語が苦手でも、モータウンサウンド好きならば十分に楽しめると思います。

Standing In The Shadows Of Motown - Full Movie

映画の最初の方で、レコード店の客へインタビューするシーンがあるのですが、

「モータウンは好きですか?好きなアーティストは?」

との問いに、

マーヴィン・ゲイ
スモーキー・ロビンソン
スプリームス
スティーヴィー・ワンダー

等々、皆アーティスト名は次々と出てくるものの、

「それでは、スプリームスのバックで演奏してたのは?」

と聞かれて、答えられる人は皆無。そもそも、

「考えてみたこともなかった」

とも。その答えがファンクブラザーズであることは、私もBBCドキュメンタリーで初めて知った次第です。そう言やあモータウンのアーティストは皆ソロ歌手かコーラスグループだったんだ、音を作ってたミュージシャン達を気に止めていなかったと気が付きました。公民権運動でも歴史の表舞台に出てきた人と、陰に隠れたままだった人といたわけですが、音楽の世界でも同じ様なことがあった訳です。

1959年モータウンレコードを設立したベリー・ゴーディー社長が、デトロイトの低所得者向け公団のある地域ブルースターで若いゴスペル歌手をスカウトしてた話は以前書きましたが、そうした若者達をバックで支えるべく、腕利きのジャズメンを揃えた。それが後にファンクブラザーズと呼ばれたミュージシャン達。しかし、彼等の名前は71年マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』まで、レコードにクレジットされることはありませんでした。どんなに曲がヒットしても、称賛されるのは歌手やプロデューサーだけ。

で、やっと名前を出してもらえたと思ったら、翌72年には会社がロサンジェルスに移転。メンバーの内何人かはロスへ着いてったそうですが、尚も脚光を浴びることはありませんでした。映画ではその栄光の陰にあった60年代の彼等にスポットを当てています。既に故人となっていたメンバー、ジェイムス・ジェマーソン(ベース)、ベニー・ベンジャミン(ドラム)、エディ・ボンゴ・ブラウン(パーカッション)、ロバート・ホワイト(ギター)等を含め、数々のエピソードが、メンバーによって語られ(過去のインタビューや再現VTRもあり)、再結成コンサートの模様とそのゲストアーティスト達(後述)とのトーク、モータウン関係者(マーサ・リーヴス、ブライアン・ホランド等)や、ベーシストでプロデューサー、ドン・ウォズへのインタビュー等で構成されています。

上記トレイラーにも出てきますが、ファンクブラザーズが世に送り出したNo. 1ヒット曲の数は、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、エルヴィス・プレスリー、ビーチ・ボーイズの4組分合計よりも多いとか。ヒッツヴィルUSAと呼ばれたモータウン本社の地下、スタジオA を、彼等は「ヘビの穴」と呼び、歌手がいない状態でオケの録音を1時間に1曲、少くても3時間で2曲、多いときは4曲という驚異的なペースでレコーディングしていきました。正にヒットマシーンだったのですね。しかし、曲がどんなにヒットしても実入りは良くなかったので、専属契約してないミュージシャンは、あちこちでバイトしてたそうです。キャピトルズの『クール・ジャーク』や、ジョン・リー・フッカーの『ブーン・ブーン』も彼等が演奏してたんですね。

そんな中でも、イギリス公演の際に、メンバーは空港で声を掛けられビックリしたと言う話は、とても興味深かったです。伝説のベーシスト、ジェイムス・ジェマーソンのファンクラブがイギリスにはあったと。

ここで、私はピンと来たのです。アメリカのドキュメンタリーには出てこなかったファンクブラザーズが、BBCのには出てきたことの意味が。つまり、イギリスでは、ビートルズもストーンズも、モータウンの曲をカバーしていましたし、その斬新な音作りの秘密に迫ろうと、熱心に研究していたから、自ずとリスナーもバックミュージシャンに注目してたのでしょう。50年代からアメリカのブルースが本国よりもイギリスで花開いたのは、差別の問題だけでなく、こうしたヲタク的研究熱心さも、関係ありそうな気がしたんです。

ちなみに、この映画のベースになってるのが、ミュージシャンでプロデューサーでもあるアラン・スラツキーによるジェームス・ジェマーソンの伝記なので、ジェマーソンの話に割いてる尺が多目になっています。ドン・ウォズにインタビューしてるのも、ベーシストを代表してるのかもしれません。

さて、モータウンの有名アーティストはマーサ・リーヴスくらいしか出てこないので、ある程度予備知識がないと話に入り込めないかもしれませんが、それを補って余りあるのがライヴの豪華ゲスト達です。以下に収録曲とアーティスト名を列記しておきますね。カッコ内はオリジナルのアーティスト名です。

1. 『ヒート・ウェイヴ』 ジョーン・オズボーン (マーサ&ザ・ヴァンデラス)
2. 『ユーヴ・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー』 ミシェル・ンデゲオチェロ (ミラクルズ)
3. 『ドゥー・ユー・ラヴ・ミー』 ブーツィー・コリンズ (コントゥアーズ)
4. 『リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア』 ジェラルド・レヴァート (フォー・トップス)
5. 『エイント・トゥー・プラウド・トゥー・ベッグ』 ベン・ハーパー (テンプテーションズ)
6. 『ショットガン』 ジェラルド・レヴァート&トム・スコット (ジュニア・ウォーカー&ザ・オール・スターズ)
7. 『恋に破れて』 ジョーン・オズボーン (ジミー・ラフィン)
8. 『悲しいうわさ』 ベン・ハーパー (マーヴィン・ゲイ)
9. 『クール・ジャーク』 ブーツィー・コリンズ (キャピトルズ)
10. 『クラウド・ナイン』 ミシェル・ンデゲオチェロ (テンプテーションズ)
11. 『ホワッツ・ゴーイン・オン』 チャカ・カーン (マーヴィン・ゲイ)
12. 『エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ』 チャカ・カーン&モンテル・ジョーダン (タミー・テレル&マーヴィン・ゲイ)


その中から、3曲ほど紹介しましょう。

『恋にやぶれて』のジョーン・オズボーンは唯一黒人でないゲストシンガーですが、メンバーと語り合う姿からも、モータウン愛が溢れていて好印象。ファンクブラザーズ自体が、白人黒人の混成バンドだった訳ですから、この人選にも意義があると思います。



因みにオリジナルのジミー・ラフィンは、本国アメリカよりもイギリスで人気の高かったアーティスト。

ド派手な衣装で歌い踊るブーツィー・コリンズの『クール・ジャーク』は、ファンク・ブラザーズのアルバイトの成果。アトランティック・レコードでのお仕事です。



ベン・ハーパーが歌う『悲しいうわさ』については、リズムへのこだわり等を、メンバーが語っておりました。



マーヴィン・ゲイは曲作りもしてましたし、自身ドラマーとしてキャリアをスタートしてたせいか、音作りには積極的に参加していた様です。再結成ライヴでも一番多く3曲取り上げられてますし、メンバーの間で一番話題に上がっていたアーティストなのです。で、彼のバックも含め、ファンクブラザーズが盛んに取り入れていたのが、ジャズのアフロ・キューバン・リズムで、それはジャズクラブでの演奏で培われたそうです。スタジオでのストレス発散でジャズを演奏してたが、それが翌日の録音に活かされることが多かったとか。そこで登場したのが、ジョセフィン・ベイカーみたいなエキゾチックダンサー、ロッティー・クレイボーンでして、"ザ・ボディ"の異名を持つ、ダイナマイトボディのセクシーダンサー。彼女がお尻を振るダンスに合わせてアドリブで音を付けていたと。そうして鍛えられたグルーヴが、そのままモータウンサウンドに持ち込まれたというのは、とても興味深い話でした。最初のトレイラーの1:28あたりには、ロッティーのダンスがチラッと映っております。

確かにマーヴィンに限らず、モータウンの曲ってバック・ビート(後ノリ)の曲が多いんですよね。アフロ・キューバンと繋がっていたとは、目からウロコでした。なので、そうしてみると、後にスカ・レゲエ好きなブッ飛びカールズバンド、ザ・スリッツのカバーも、何だかシックリ聴こえてしまうから不思議ですね。スッカスカのギター音と自由気ままなヴォーカルも、バックビートがしっかりしてるから、原曲の音が素晴らしかったから、カッコ良く聴こえるのではないかいな?と。

The Slits I Heard It Through The Grapevine

興味のある方は一聴してみてくださいませ。

また、曲作りの中心的存在だったスモーキー・ロビンソンについて、

「2小節ほど書いたメモを持ってスタジオへ行っては、ファンクブラザーズとアイディアを練りながら曲を完成させていた」

とは、マーサ・リーヴスの談。スモーキーの作ったメロディに対し、ジェイムス・ジェマーソンがあれこれとアイディアを出して、そこに他のメンバーも加わって、一緒に曲を作り上げていたと。スモーキーには元々メロディメイカーの才能があったのでしょうけど、それを伸ばしたのはファンクブラザーズと言う優れたミュージシャン達だったのかしれません。彼等との間で化学反応を感じたスモーキーが、少しでもメロディが浮かんできたら、直ぐにでもファンクブラザーズとシェアして、演奏しながら一緒に作り上げたくなったのではないかと。

スモーキーと言えば、以前書きましたが、テンプテーションズ『マイ・ガール』のギターイントロを、ギタリストのロバート・ホワイトが作ったのも、そう言った状況から生まれたのだと想像出来て、とても嬉しくなってしまいました。

しかし一方で、90年代にロスのレストランで『マイ・ガール』が流れた時、ウェイターに「このギターは私が弾いてるんだ」と言いたかったけど言わずにガマンしてたというロバート・ホワイト。その話をしてくれた原作者のアラン・スラツキーは、こう付け加えました。「音楽史に残るギターの名フレーズの作者が世間に知られてないなんて」。また、ジェイムス・ジェマーソンはモータウン25周年ライヴに招待されず、自分でチケットを買って見に行った数か月後に、失意のまま亡くなった、等という話には胸が詰まってしまいましたし、アラン・スラツキーが本に書こうとした理由も、理解することが出来ました。

と言ったところで、最後に60年代のアメリカ黒人音楽が避けて通れない話題として、公民権運動関連のお話を少し。メンバーには白人のミュージシャンも複数いました。ギタリストのジョー・メッシーナはイタリア系ですが、なるほど白人ジャズメンではユダヤの次に多いのがイタリア系と、どこかで読んだことがあります。メッシーナは

モータウンのギターはオレオ(クッキー)

と言って笑ってたのが印象的でした。ロバート・ホワイト(黒人)、ジョー・メッシーナ(白人)、エディ・ウィリス(黒人)

をチョコクッキーでバニラクリームを挟んだオレオだとジョークで言えるのは、それだけの信頼関係があった証拠ですから。そして、偉大なる初代ベーシスト、ジェームス・ジェマーソンの後を継いだボブ・バビットも白人ではありましたが、黒人だろうと白人だろうと、やっている音楽が素晴らしければ、皆尊敬したし、黒人のベーシスト達もこぞってバビットの演奏を真似てみたものだと、周囲から称賛されていたのです。

そうは言っても、キング牧師暗殺事件後には、辛い思い出もあったのでしょうか、ミシェル・ンデゲオチェロから質問されたバビットが言葉に詰まって、彼女に肩を抱かれるシーンもありました。

と言う訳で、日の当たらない縁の下の力持ちにフォーカスした話は、日本人が好むところでもありますし、ライヴパフォーマンスも素晴らしいものばかり。音楽を楽しめる映画としてもオススメの一本です。


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タグ: ソウル 60年代

テーマ:Soul, R&B, Funk - ジャンル:音楽

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Comment
こんばんは

待ってましたの記事でした。
読んでいて、音楽音痴の私も、全然違った意味で泣けました。

「What's Going On」
「Me And Mrs. Jones」
「黒い夜」
「Precious, Precious」
「Mama Used To Say」
「Groove Tonight」
「Feel The Fire」
「男が女を愛する時」

これ全部山田詠美の短編集「ソウルミュージック・ラバーズ・オンリー」の短編タイトルなんです。

角川版あとがきには
「体で自分たちの音楽を愛するってことをやってのけるのだ、彼らは。」とあります。

恋愛系の本が苦手な私がなぜこの本に拘るのかというと、きっとバックに聞こえる(気がする)音楽のせいではと思わずにはいられません。

この本、書いたご本人は「色恋」から生まれたと思っていらっしゃるかもしれませんが、私は音楽から生まれた、と思っています。

その音楽の裏側を知ることなくこれまで生きてきたわけですが、こうして読ませていただくと、なんて面白いんだろうと心から思います。
ありがとうございます(*^▽^*)

いつもながら素晴らしい解説、恐れ入ります。
大変勉強になります。

このドキュメンタリーは以前観たのですが、レコード店の客へインタビューするシーンでの答えは仕方がないですよね。
日本でも近年は彼等のことは有名になりましたが、もともと黒人音楽はアルバムに対して熱心では無くて、シングル志向だったので、クレジットも載せる気がなかったんでしょうね、レコード会社としては。
でもこうやって彼等のことが日の目を見るようになるのは、音楽ファンとしては、遅すぎ!ということはあるにせよ、まー良い時代になりましたね。
MTV以前は、そもそも日本で洋楽の映像を観ることが、限られていましたから。
mikaidouさんへ

> 待ってましたの記事でした。
> 読んでいて、音楽音痴の私も、全然違った意味で泣けました。
>
> 「What's Going On」
> 「Me And Mrs. Jones」
> 「黒い夜」
> 「Precious, Precious」
> 「Mama Used To Say」
> 「Groove Tonight」
> 「Feel The Fire」
> 「男が女を愛する時」
>
> これ全部山田詠美の短編集「ソウルミュージック・ラバーズ・オンリー」の短編タイトルなんです。

私もソウルラヴァーのはしくれと思ってましたが、山田詠美、何も読んだことありませんです。また、ひとつ課題が出来ました。ありがとうございます。

> 角川版あとがきには
> 「体で自分たちの音楽を愛するってことをやってのけるのだ、彼らは。」とあります。
>
> 恋愛系の本が苦手な私がなぜこの本に拘るのかというと、きっとバックに聞こえる(気がする)音楽のせいではと思わずにはいられません。
>
> この本、書いたご本人は「色恋」から生まれたと思っていらっしゃるかもしれませんが、私は音楽から生まれた、と思っています。
>
> その音楽の裏側を知ることなくこれまで生きてきたわけですが、こうして読ませていただくと、なんて面白いんだろうと心から思います。

ブルースもソウルも根底には色恋が欠かせないので、mikaidou様と詠美様、どちらの仰る事は正しいのだと思います。
バニーマンさんへ

> 日本でも近年は彼等のことは有名になりましたが、もともと黒人音楽はアルバムに対して熱心では無くて、シングル志向だったので、クレジットも載せる気がなかったんでしょうね、レコード会社としては。

そうですね。マーヴィンのホワッツ・ゴーイン・オンはコンセプトアルバムだったでしょうから、アルバム重視の流れと繋がってるんですね。

> でもこうやって彼等のことが日の目を見るようになるのは、音楽ファンとしては、遅すぎ!ということはあるにせよ、まー良い時代になりましたね。

イギリスにファンクラブがあったくらいですから、出るべくして出たと言う感じでしょうか。ジョンリーのブーン・ブーンはイギリスでダイヒットした筈ですから、モータウンのベース音と同じだと、気付いてたファンも多かったのでは?

> MTV以前は、そもそも日本で洋楽の映像を観ることが、限られていましたから。

今ではYouTubeで見放題ですか、よい時代になりました。


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