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yuccalina

Author:yuccalina
自閉症の息子(14才)と、エンジニアの夫との3人暮らしのアラフィー主婦です。45才でヨガ指導者スクールを卒業し、現在地元で極々細やかな教室を開催。

一方、トランシルヴァニア(カロタセグ地方)の伝統刺繍、イーラーショシュのステッチを用いた雑貨『Yuccalina Erdő=ユッカリーナ・エルドゥ』の制作も行っています。

ミンネ・ギャラリーにて作品展示中。

ブログでは主にハンドメイド、ガーデニングに加え、10代から親しんできたロック音楽に、映画、本等について綴っています。

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ユッカリーナのヨガ的雑記帳


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2015/09/09 14:30 yuccalina

『キャデラック・レコード』への複雑な思いと珠玉のセリフ

このブログでは、昨年12月から半年ほどかけて、ブルース音楽のドキュメンタリー『The BLUES Movie Project』のDVDボックスを紹介してきました。ブルースやロックに造詣の深いマーティン・スコセッシ監督が総指揮を取った、ブルース生誕100年を記念した一大プロジェクトでした。

その中で、シカゴ・ブルースの名門レーベル、チェス・レコードを扱った『ゴッドファーザー&サン』(コチラ)について書いてた時に、この『キャデラック・レコード』と言う映画があることを知ったのですが、先日CSの映画チャンネル、ムービープラスで放送され、見ることが出来ました。



最初に白状しててしまえば、あまり感動はなかったです。例えばあの『マッスルショールズ』(コチラ)みたいに大絶賛は出来ません。かと言って駄作だからと斬って捨てることもできない、実に厄介な映画ですね。見た後でネット上でレヴューをいくつか読んでみたのですが、「チェスやブルースに思い入れがある人はガッカリするかも」は、実に的確なアドバイスかもしれません。その一方で、「きれいごとだけで済ませてないのが良い」との評価にも、私は頷かざるを得ませんでした。それはつまり、ブルースとは不条理を歌ったり、ゲスな下ネタも題材にする音楽な訳ですから。

ただ、実話と作り話がゴチャゴチャ混ざってるのが、私には非常に居心地が悪かったです。以下、気になった点について。

チェスレコードは兄レナードと弟フィルの共同経営であったが、レナード(エイドリアン・ブロディ)しか登場しない。

レナードの息子マーシャル(1942年生まれ)も60年代後半には、マディ・ウォーターズのプロデューサーをして関わっていたが全く触れられていない。

ボ・ディドリーもココ・テイラーも、
バディ・ガイも、サニー・ボーイ・ウィリアムソンⅡも登場しない。

そりゃ、登場人物が多すぎたら、ブルースを余り知らない人にはワケわからなくなるだろうけど。

そして、何よりも一番不満なのが、

エタ・ジェイムズ(ビヨンセ)とレナードが愛人関係という作り話ですな。

これは、私が唯一良いと思った台詞と関係があります。実父であると思い込んでいたミネソタ・ファッツと対面し拒否されたエタが、「どうせ自分は黒人だから」と当り散らすと、レナードが諭すようにこう言うんです。

「悲しみに自分を乗っ取られるな。マディはそれを歌に託して、心から追い出す」

って、これこそ、ブルースの真髄でしょ?マディはかつて「俺をブルーにするのは空腹と女」と語ってました。B・B・キングも「ブルースとは心情を吐露し、人生を歌うもの」って言ってたっけ。このレナードの台詞が私の心に強く響いたからこそ、ブルーズメンが歌に託した人生を、もっと深く突いてってほしかったなあ、と思った訳ですね。

だって、儲かってゲットしたキャデラックの新車と、群がる女でウハウハの場面を一杯流す時間があったら、もう少し別のことに使えなかったのかと、とても残念に思ったのですよ。そらー、金と女と酒とクスリと暴力でドス黒さを描くのも、ブルースとしてはアリなんでしょうけど。そんな中で、エタが歌に絞り出した思いが、レナードへの叶わぬ恋心という展開で、あの名曲『I 'd Rather Go Blind』が出てきた時、私はすっかり興醒めしてしまいました。



ビヨンセ・エタ熱唱した後に、エイドリアン・レナードが心臓発作であっけなく亡くなるのも、レナードのせいで、お酒やクスリに依存したみたいになってたのも何か嫌~。そもそもあの歌って、彼女の友人エリントン・ジョーダンがアウトラインを作ったそうなので、本当は男性から女性に歌われてたんじゃなかったっけ?録音場所だって、チェス・スタジオでなく、アラバマのFAMEスタジオ(マッスルショールズ)の筈だし、とか思ったら、全然曲が入ってこなくなってしまった。本当はこれ、大好きな歌なのに~!

一方で、真実味のあった部分は、マディ・ウォーターズとハウリン・ウルフが犬猿の仲だったとかですね。モータウンもそうでしたけど、同じ会社でのライバル争いは、当然チェスにもあったのでしょう。また、冒頭でアラン・ローマックスがブルースのフィールドレコーディングでミシシッピーへやってきて、(お目当てはロバート・ジョンソンだったそうな)マディと名乗る前の青年マッキンリー・モーガンフィールドの歌を録音する場面はとても良かったです。ちなみにマディが白人に従順で、ウルフは噛みついてくるというイメージが出来上がったのには、マーシャル・チェスが60年代後半にプロデュースした『Electric Mud』(マディ)と『The Howlin' Wolf Album』(ウルフ)への、それぞれの反応も関係してるのかしら?どちらも当時流行りだったサイケデリックサウンドとブルースを融合するコンセプトでしたが、ノリノリだったマディに対し、ウルフはかなり嫌がっていたらしいですから。

エタが「自分の父親はハスラーのミネソタ・ファッツ」と信じてたのは本当の話だそうです。但し、実際エタが彼と対面したのは、レナードが無くなって20年近くたった1987年。映画同様、確認することは出来ず、ミネソタ・ファッツは全く身に覚えが無かったとか。

それと、レナードがマディの曲をDJに売り込む際に、ワイロを渡すシーンですが、レイ・チャールズの伝記映画『レイ』にも、アトランティックレコードのジェリー・ウェクスラーがDJに札束を手渡す場面がありました。小さな独立系の会社は、そうやって入り込むしかなかったのであろうと、想像に難くないです。ちなみにウェクスラーはリズム&ブルースの呼び名を作った、ブルース界の重鎮です。音楽評論家からアトランティックの名プロデューサーになり、数々の才能を発掘しました。そして、彼もユダヤ人でした。

さて、映画公開時はエタ・ジェイムズは健在(2011年没)でしたし、フィル・チェスやマーシャル・チェスからもクレームは無かったのなら、私がどうこう言う問題じゃないのでしょうが、一番ショックだったのは、レナード・チェスの人物像ですね。演じたエイドリアン・ブロディは洒落た服に身を包み、いかにも女好きそうな遊び人の風貌ですが、写真のレナードは地味で真面目そうに見えます。黒人からぼったくって大儲けした守銭奴で、会社の所属女性歌手に手を出して、って何か酷くないっすか?『ゴッドファーザー&サン』がユダヤ人側から描いたドキュメンタリーだった為、レナードは良く描かれてたのかな?弟フィルと息子マーシャルの言葉からは、

黒人教会から聴こえてくるゴスペルに、食事も忘れ二人で夢中になった。それが、チェスを始める原点。(byフィル)
父は仕事中毒だったから、そばにいたくて子供の頃から僕も会社に入り浸っていた。(byマーシャル)
父とマディは親友同士だったが、父は彼を心から尊敬していた。(byマーシャル)


その一方で、

儲けた金でキャデラックを手に入れ良い女を抱けた。(byマーシャル)

と言う、『キャデラック・レコード』に即した発言があったのも事実ですが、それはほんの一部です。

それとですね、バブリック・エネミーのチャックDも、レナードを称賛してますたわ。以下キャプチャーは全て『ゴッドファーザー&サン』より。

tbmp1.jpg
tbmp2.jpg

そう、この写真が本物のレナード・チェスです。こんなのもありますよ。左から、レナード、ハウリン・ウルフ、ウィリー・ディクソン、サニー・ボーイ・ウィリアムソンⅡ。

tbmp3.jpg

ちなみに、本物のエタ・ジェイムズはこちら。曲は『I'd Rather Go Blind』とカップリングで、こちらがA面だった『Tell Mama』。



ムムム、この二人が愛人関係ってさあ、、。エタってビヨンセとは全然タイプが違いますよね。まあ、彼女が問題児だったのは確かなようで、レナードはFAMEスタジオへ彼女を送り出す際、リック・ホールに取扱い注意のアドバイスをしてたそうですが。


とまあ、『キャデラック・レコード』のレナード像は、『ゴッドファーザー&サン』から私が想像してたそれと、余りにもギャップがあるんですね。幼い息子が会社に入り浸ってる状態で、女遊びしてたんか?とか。映画のレナードとマディはとても親友同士には見えなかったしね。

しかし、映画が黒人側から描いた作品だとすると、やはり双方に温度差があったのかも?と疑わざるをえません。そこで、ちょっとだけ調べてみたのが、映画の語り部となっているウィリー・ディクソンです。『ゴッドファーザー&サン』でマーシャルは彼を「黒人で初めての会社重役」と言ってましたが、本人は丁稚奉公だと思ってたかもしれん?と。それを匂わせる記述を、ディクソンの英語版Wikipediaで発見してしまいました。「ディクソンは会社と衝突してた」たったこれだけですけどね。彼は作曲家、ベーシスト、そしてスカウトとしてその才能を発揮するのですが、便利だから良い様に使われて十分な報酬を受けてない→搾取された、と思ってた可能性はありますな。但し、安月給でこき使われたにせよ、チェスでの経験がその後のビジネスに役立ったのは確かではないかしら?ディクソンは後にブルースの著作権保護の為に、ブルース財団を設立しました。映画の最後には、レッド・ツェッペリンを訴えて勝訴した件が字幕で出ましたが、それもチェスでの丁稚奉公と無関係ではないと思うのでした。それに『ゴッドファーザー&サン』の中では、ブルースフェスで再会したディクソン夫人とマーシャルがハグするシーンがあり、夫人から「お父さんの再来ね」とお褒めの言葉を頂く場面がありました。ですから、昔衝突があったにせよ、次世代に引き摺るようなものではなかったということですね。

ところで、ユダヤ人とブルースの関わりについて、実は私にはある種のファンタジーがあって、以前コチラの記事で書きました。それは、東欧のユダヤ音楽クレズマーとブルースに、共通するものを感じてることです。クレズマーはロマの音楽とも関わり合いが深く、ユダヤ人が東欧においてロマと音楽的価値観を共有していました。それが、新大陸へ渡って、今度は黒人のブルースを共有する様になったのでは?というファンタジー。だからこそ『The BLUES Movie Project』の中で、チェス兄弟を始め、ディック・ウォーターマン(サンハウス、ジョン・ハート等のマネージャー)やビル・グレアム等ブルース音楽を愛するユダヤ人達の役割に、私は注目してた訳です。そんな私には『キャデラック・レコード』での金の亡者的レナード像は、非常に居心地の悪かったのでしょう。

最後にもう一つ、先述のレナードの名セリフですが、私がそこでB・B・キングを思い浮かべたのには訳があります。『The BLUES Movie Project』に何度も登場したBBですが、彼の口からは余り恨み辛みが出てこなかったことが、私にはとても印象深かったからです。綿畑での辛い日々を語る時も、どこかあっけらかんとしていた。BBの心は悲しみや怒り、憎しみから解放されて、とても自由な気がしたのです。そう言えば、

私は自由だ!

と歌うBBがとても大きく見えた瞬間に、私はトリ肌が立ってしまった話をコチラで書きましたが、多分マディ・ウォーターズにも、そう言う懐の深さがあったのでは?60年代、黒人はまだ法律上も自由でなかったけれど、ブルースによって負の感情から自由になった寛容さが。レナード・チェスがマディを尊敬していたのは、そう言う理由なのかもしれない、と私に思わせてくれた。『キャデラック・レコード』のレナードのあのセリフは、そんな珠玉の言葉だったのでした。


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鍵コメ様

了解しました。ありがとうございます。
その状態で問題ないと思いますよ。拙ブログも同様ですから。
こんにちは。
この映画見ましたが、すべて実話と思ってました。すみません。色々知ってると気になることがあるんでしょうね。
抹茶アイスさんへ

> この映画見ましたが、すべて実話と思ってました。すみません。色々知ってると気になることがあるんでしょうね。
そうですよね。実在のアーティストが沢山出てきますし。
ただ、ブルースを知らない層にアピールするには、面白いドラマだったかもしれないです。


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