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yuccalina

Author:yuccalina
自閉症の息子(14才)と、エンジニアの夫との3人暮らしのアラフィー主婦です。45才でヨガ指導者スクールを卒業し、現在地元で極々細やかな教室を開催。

一方、トランシルヴァニア(カロタセグ地方)の伝統刺繍、イーラーショシュのステッチを用いた雑貨『Yuccalina Erdő=ユッカリーナ・エルドゥ』の制作も行っています。

ミンネ・ギャラリーにて作品展示中。

ブログでは主にハンドメイド、ガーデニングに加え、10代から親しんできたロック音楽に、映画、本等について綴っています。

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ユッカリーナのヨガ的雑記帳


2015/05/14 17:11 yuccalina

山岸涼子『牧神の午後』~『黒鳥』編

久しぶりにバレエのお話を。と言っても扱うのは漫画ですが、大分前から温めていました。

去年の秋にバレエリュス展を見て以来、ずっと思ってたのが、バレエリュス関連の本を何か読んでおきたい、ってことでした。Amazonを検索すると、ジョージ・バランシンや、タマラ・カルサヴィナの伝記は、中古で高価なものしかなく、国書刊行会のこちらは、最初に手を出すには敷居が高そう、


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等と二の足を踏んでいた時、ふと思い出したんです。山岸涼子センセーのバレエ漫画を。

漫画と言うと、今ではダンナが毎週購読してるモーニングの中の数本を読む程度のワタクシですが、小中学校時代は漫画漬けでした。私が文字だけの本を読めなかったのは、言語能力が遅れ気味で、視覚的な方が理解しやすかったから、と今になって思うのですが、山岸先生の『アラベスク』とかも、昔、読んだことあるんですよ。で、探してみたら、バレエリュス絡みの作品がありましたよ。


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表紙がニジンスキーで、タイトルが『牧神の午後』ですから、分かりやすかったですし、ジョージ・バランシンの4番目の妻、マリア・トールチーフを描いた『黒鳥』も収められていました。その他、山岸先生自身のバレエ発表会体験記や、バレエスタジオ訪問(何と首藤康之さんが登場!)とか、ローザンヌ国際バレエコンクールのリポートなど、盛り沢山な内容です。

で、取り上げたいのが『牧神の午後』と『黒鳥』なんですが、それぞれ書きたいことが沢山ありましたので、分けることにしました。今回は『黒鳥』編です。

バレエよりも男女の愛憎に重きを置いたと思える内容であり、ネイティヴアメリカンの血を引くマリアが呪術的な力を持っているというミステリー仕立て。それでも、バランシンバレエを理解する上で、私には中々興味深い内容だったんです。バレエリュスのプロを後世に伝えた重要な人物の一人、ニジンスキーの妹ヴロニスラヴァ・ニジンスカが、マリアを育てた先生だったことも、アメリカバレエとバレエリュスの深い関係の一端でしょうが、やはりバランシンがアメリカに渡ってバレエ団と学校を作ったことが一番大きかったんでしょうね。後に黒人ダンサー、アーサー・ミッチェルを入団させ、白人ダンサーのミクスチャーを芸術にしたバランシン(動画はコチラで紹介しています)が、ネイティヴの血を継ぐマリアのルックスに惹かれたことも、どこか象徴的に思えました。

そんな中でも、バレリーナの体型については、なるほどと思いました。

マリアはバランシンとの初対面で、「贅肉を落とすように。もうポッチャリ型プリマの時代は過ぎたよ」と言われちゃうんです。

実は私も、バレエリュス展で20年代の写真を見た時、思ってましたから。あの頃のバレリーナって結構ぽっちゃりしてた?って。

で、後にマリアの次の妻となるタニィ(タナキル・ル・クラーク)と言うダンサーは、幼い頃からバランシン・メソッドで鍛えられ、彼の理想とする体型とテクニックを持ち合わせた美しいバレリーナに成長します。YouTubeにマリアとタニィの動画がありましたので、ここで紹介しますね。

マリアの『火の鳥』はクラッシックを得意をする彼女の為に改作された、と本作に描いてありました。



一方、タニィの『ウエスタン・シンフォニー』はカントリーというがアイリッシュダンス?を取り入れたモダンな作品で、クラッシクにはない手足の動きが沢山。



結果は絶賛を博したそうです。漫画では、基本に忠実で垂直の軸を外して踊れないマリアが、恨めしそうにタニィを見つめる絵が描かれていました。

そんなこんなで、タニィの細い手足に嫉妬するマリアが呪いを掛ける、というミステリーな展開になっちゃうわけですが、まあ呪い云々は余り興味ありません。私が注目したのは、バランシンの美への異様な執着心。彼はその理想とするの美の為に、歴代の妻達が出産するのを認めず、中絶させていた。そこから、読み取れるのは、彼は一人の男性として女性を愛することが出来なかったと言うこと。マリアが2度目の妊娠をし、今度こそ生ませてをお願いする彼女に投げかけたのは、

「美しい女性というのはそれだけで私にインスピレーションを与えてくれる。優れたバレリーナは人類に美をもたらす選ばれた存在なんだよ。僕は君の美に奉仕するために生まれた。お願いだから、君の美を無駄なことに費やさないでくれ」

と言う言葉。それに対しマリアはぞっと背筋を凍らせたのですが、私も偏執狂的ヤバさを感じてしまいました。妊娠&出産を無駄なこと言い切るかね?

「彼は自分が奉仕した女性から捨てられる可哀想な男だと言うけれど、本当はバレリーナとしての美しか見てもらえない事に気付いた女性達が、美貌の衰えと共に自分が無用になった事を思い知り、居たたまれなくなって去っていくのだ」

とか言うマリアのモノローグが続くのです。

とまあ、結局バランシンは結婚をしちゃいけないタイプの男だった、ってことでしょうが、その人格的問題?もあくまで家庭人に向かなかっただけの話で、芸術家としては逆に研ぎ澄まされて良かったのでは?と思ったんです。自分の遺伝子を残すという本能よりも、芸術への思いの方が強かったお蔭で、生物学的な遺伝子は残らなくても、バランシンバレエに見せられた数多のダンサー達が、芸術的遺伝子を受け継いでくれる結果になった訳ですから。

で、その美への執着ですが、クラッシックバレエの基本から外れたバランスで、なおかつ美しく見せることと、音楽に乗って踊るというより、動きで音を表現するべく細かい振付けや決まり事があるんだそうです。バランシンはバレエ音楽以外でも、沢山振付けしてますし、音楽家の家庭に育ち、自身も作曲をしていたというのも大きいのでしょう。また、先のウェスタン・シンフォニーに見られる通り、民族舞踊も取り入れたり、様々な要素をバランスよく融合することに長けていたようです。ここで、スコティッシュダンスをモチーフとした『スコッチ・シンフォニー』(メンデルスゾーン作曲)を紹介します。



これ、キーロフバレエ1989年の公演とありましたので、まだ旧ソ連時代のものなんですねえ。映画『ホワイトナイツ』でガリーナ(ヘレン・ミレン)が「キーロフでもバランシンをやるのよ」と自慢気に言うシーンがあったなあ、と思い出しました。

と、話が逸れましたが、音楽の美とダンサー達の躍動美が絡み合ったバランシン芸術の影には、一人の女性として愛されたかった歴代妻達の涙があったのかもしれません。

ところで、タイトルの黒鳥は、マリアが『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』授賞式でブラックスワンを踊ったことから。タニィへの嫉妬で自らのドロドロした内面を思い知ったマリアが「今ならブラックスワン踊れる」と確信し、生涯最高のパフォーマンスをしました。それがバレリーナとして覚醒した瞬間でありつつも、その後も心の闇を拭い去ることは出来なかった、というお話でした。『黒鳥』は50ページ程の小品ではありますが、芸術だけでなく人の心も丁寧に描いていると思います。

と言ったところで、もう一つの『牧神の午後』は既に読み終えているものの、色々と調べたいことがあるので、もう少し時間がかかりそうです。


お読み頂きありがとうございました。
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テーマ:バレエ - ジャンル:学問・文化・芸術

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Comment
yuccalina さん、こんにちは^^
山岸涼子は一番好きな漫画家でした。
怖いお話をよく描いていて、妙にリアルな感じが好きだったんです。
そういえば、『アラベスク』だったか、バレエのお話も読んだことがあったのを思い出しました。

どちらかというとクラシックよりはモダン・バレエの方が趣味にあっている、というところから正直に言ってしまうと、確かにタニィのスタイルも素敵だし、踊りも魅力的だと思いました。

バランシンの価値観は、分からなくもないような気がします。
幸せではないかもしれませんが。
Arianeさんへ

> 山岸涼子は一番好きな漫画家でした。
> 怖いお話をよく描いていて、妙にリアルな感じが好きだったんです。
> そういえば、『アラベスク』だったか、バレエのお話も読んだことがあったのを思い出しました。
確かに黒鳥もちょっと怖い感じのある作品でした。山岸涼子は確かビアズリー好きでもあったような?人間の内面を描くのが得意な方ですよね。

> どちらかというとクラシックよりはモダン・バレエの方が趣味にあっている、というところから正直に言ってしまうと、確かにタニィのスタイルも素敵だし、踊りも魅力的だと思いました。
やっぱりモダンな振り付けの方が、バランシンらしくて魅力的だなと、私も思います。

> バランシンの価値観は、分からなくもないような気がします。
> 幸せではないかもしれませんが。
家庭人としては余り幸せじゃなくても、そのお陰で芸術家としては、やりたいことを沢山出来たんじゃないかと思ってます。そう言う意味で、決して不幸だったとは思えないんです。


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