2013.09/03 [Tue]
ビートクラブdeロックな話(11)~ハードロックとソウルのゆくえ~Deep Purple, James Brown etc.
- ジャンル:[音楽]
- テーマ:[60年代から70年代のPOPs & ROCK]
伝説のロックTV「ビート・クラブ」(ドイツ・ラジオブレーメン製作)のDVD BOX2から、数曲チョイスして紹介しているシリーズの11回目です。第46回放送分(1969年)の収録内容は以下の通り。
Disc 4-2 : Beat Club No.46(1969年)
Artist : Title
Deep Purple : Hallelujah*
The Three Dog Night : Try A Little Tenderness
James Brown*
Procol Harum : Long Gone Geek
Tim Rose : Hey Joe
Interstate Roadshow : Grindy Grindy
Windmill : Big Bertha
Jimmy Ruffin : I've Passed This Way Before*
Steamhammer : Junior's Wailing*
Steamhammer : When All Your Friends Have Gone
The Move : Curly
Humble Pie : Alabama 69
Humble Pie : Natural Born Woman
(*印は今回紹介する曲。タイトル無しのアーティストはインタヴューまたは紹介VTR等。)
上記リストの*印を見たら察しがつく人もいるかもしれませんが、今回はハードロックとソウル&ファンクといつ2つの流れに沿ったお話をしようかなと思います。
先ずはハードロックの必須バンド、Deep Purpleですが、この「Hallelujah」って全く知らない曲でした。オリジナルアルバムには収録されていないシングル曲で、ラインナップは名盤を送り出した第2期。シャウトするイアン・ギラン、まだ髪フサフサ美青年リッチー・ブラックモアのギターが泣いておりますが、何だかこの曲パープルっぽくないよな、と思ってたら、ソングライターチーム、クック&グリーナウェイという方々の作品だそう。
このコンビが他に残してるのが、アンディ・ウイリアムスの「Home Lovin' Man」とか1968年ユーロビジョンコンテスト代表曲、クリフ・リチャードの「High And Dry」、ホリーズの「Gasoline Alley Bred」とか、まーどれもこれも全然Deep Purpleのイメージから遠いものばかり。というのを踏まえると、かなり曲を自分達の世界に寄せて来てる、とも言えますね。
しかし、これって当時のアーティストの地位の低さを象徴してるのでしょうか。レコード会社の意向でレコーディングされたのかな、と言う事情が伺えて興味深いです。以前このビートクラブシリーズ第8回で取り上げたJackie Lomaxが、「最初はアーティストでなく作曲家としてアップルレコードとの契約を希望していた」理由も、なんとなく分かってきました。つまり、自分で曲を作れても、自作品をレコーディングさせてもらえるかは別の問題。昔、何でヤードバーズの最大のヒット曲が(後の)10㏄のグレアム・グールドマンの曲「For Your Love」だったのか、逆にグールドマン自身でのレコーディングが余り世に広まらなかったのか、とても疑問だったのですが、大人の事情が色々あったのでしょうね。話をパープルに戻せば、長い髪やファッションスタイルに関しては、ハードロック型が既に出来上がってる感のDeep Purple。皆若くてそこそこカッコ良かったですが、やはり、ロバート・プラントのような圧倒的ルックスがいなかったので、女子からの人気はもう一つだったかもしれません。ってあまり良く知らんけど。
さて、同じくハードロック創世記のHumble Pieは、以前、ピーター・フランプトンの話で動画を取り上げましたので、今回はスルーしますね。ロン毛にジーンズのスティーヴ・マリオットもカッコイイし、ロバート・プラントに引けを取らない美丈夫のピーター・フランプトン。でも、声がちょっと甘ったるいかな。マリオットの歌と続けて聴くと、なんか辛いものが、、。
そして、全く知らなかったSteamhammer。むさ苦しいルックスから、勝手にアメリカのバンドかと思ってましたが、イギリスでした。いや、見かけだけでなく、サウンド的にもアメリカ南部の泥臭さが感じられ、イントロでブッカーT&MGsを思い浮かべたんですよね。フレディ・キングのイギリスツアーでバックバンドをしていたそうですが、ジャズロック的ソロパフォーマンスもあったり、ハードロック的でもありプログレ的でもありそう。ってか、元を辿ればどちらもブルーズロックか?ともあれ、このブルージーな「Junior's Wailing」という曲は、Status Quoによってカヴァーされます。
バンドは商業的成功とは無縁でしたが、メンバーの中に、ロッド・スチュワートの名曲「マギー・メイ」の共作者マーティン・クイッテントンがいたり、後にキース・レルフとアルマゲドンを結成するマーティン・ピューという人がいたりと、その辺が好きな人達の間では、知られた存在だったのかもしれません。
では、ここから先は、ソウル&ファンクの話に移りましょう。もう少し後になりますが、ハードロックと共に70年代を彩ったものの一つにディスコ音楽があると思うのですが、私は今まで結構、薄っぺらい音楽とバカにしていました。しかし、ディスコ音楽はソウル&ファンクの流れから生まれたんですよね。
ファンク音楽の先乗り、ワン、トゥー、スリー、フォー、と最初にアクセントが来るところと、ギターもキーボードもホーンも、打楽器のように音を刻むところ等がファンクの基本なのですが、ディスコはそれを継承しているのです。
そんな訳でファンクつーたらジェームズ・ブラウンは避けて通れません。インタヴューでは黒人として誇り高く、堂々と生きる様を見せています。ソウルやファンク音楽が60年代後半の公民権運動と、切り離せない存在であったことは、彼の「Say It Loud, I'm Black and I'm Proud」という曲からも明らかです。
Black is beautifulと声高らかに謳われるようになったのは、この頃からだったのでしょうか?確かにファッションへの影響も強かった様に思います。もう少し後の話ですが、日本の芸能人の間でも、アフロやカーリーヘアが流行ったのも、元を辿ればソウル・ファンクカルチャーに行き着くのではないでしょうか。郷ひろみもアフロにしてたことありましたよね。
と、話が少々外れてしまいましたが、お次のJimmy Ruffinは、モータウンの看板アーティスト、TemptationsのDavid Ruffinの弟です。アメリカよりもイギリスでの人気が高かったとか。同じソウル音楽で括られていても、激しいJBに比べたらお品が宜しいと言うか、白人ウケを狙ったソフト路線という、モータウン色が出ている気がします。お行儀の良いスーツ姿でないとこは、ファッション的に60年代が終わってると見てとれますけどね。勿論良い曲だとは思いますが、ちょっと物足りないかな?Three Dog Nightがカヴァーしてるオーティス・レディングの「Try A Little Tenderness 」なんかと比べても大人しいんですもん。
とか文句言いつつも、Jimmy Ruffin絡みでもう1曲。この「I've Passed This Way Before」はウェザースプーン&ディーンの作品ですが、同チームの曲「What Becomes Of The Broken Hearted」が、彼の最大のヒット曲で、様々なアーティストからカヴァーされています。YouTubeをザッと見たところで、ロッド・スチュワート版、ミック・ジャガーがプロデュースしたクリス・ファーロウ版とか、80年代を代表するブルーアイドソウル、ポール・ヤング版等色々ありましたが、今回はルーサー・ヴァンドロスとボーイ・ジョージのデュエットです。
どうやら米国アポロシアターのメモリアルイベントでのパフォーマンスみたいですね。もしかしたら、テンプテーションズとホール&オーツが共演したライヴと、同じものかもしれません。
と言ったところで、ハードロックとソウル・ファンク、どちらもより刺激的で激しいサウンドへと、進みつつあった時代。アバンギャルドがもてはやされた時代。音楽のみならず、様々な分野で実験的な事が行われた時代でもありました。当然、ファッションにも当てはまるようです。わざと小汚なくすることは、既成概念への反抗を表明することであり、そこに東洋思想やフォークロアといったスパイスを加えられていた様です。そんな中で面白いものが出てこない訳がないでしょ。
実はマンガを殆ど読まない私は、アメトークで初めて「ジョジョの奇妙な冒険」と言う作品を知ったのですが、あれって、アレハンドロ・ホドロフスキーの映画っぽくないですか?後にジョン・レノンが「ホーリー・マウンテン」を大絶賛したとで有名になったホドロフスキーですが、処女作「エル・トポ」が作られたのもこの時代なんですよね。日本でも、寺山修二の「天井桟敷」とか、ピーターが映画「薔薇の葬列」で鮮烈な印象を残したのがこの頃な訳で、テイストは現代にも生き付いているのかもしれませんね。それでは、また次回。
お読み頂きありがとうございました。
↓良かったらどれか1つポチお願い致しますm(__)m
にほんブログ村
ビート・クラブ 2 [DVD] (2011/10/12) オムニバス 商品詳細を見る |
Disc 4-2 : Beat Club No.46(1969年)
Artist : Title
Deep Purple : Hallelujah*
The Three Dog Night : Try A Little Tenderness
James Brown*
Procol Harum : Long Gone Geek
Tim Rose : Hey Joe
Interstate Roadshow : Grindy Grindy
Windmill : Big Bertha
Jimmy Ruffin : I've Passed This Way Before*
Steamhammer : Junior's Wailing*
Steamhammer : When All Your Friends Have Gone
The Move : Curly
Humble Pie : Alabama 69
Humble Pie : Natural Born Woman
(*印は今回紹介する曲。タイトル無しのアーティストはインタヴューまたは紹介VTR等。)
上記リストの*印を見たら察しがつく人もいるかもしれませんが、今回はハードロックとソウル&ファンクといつ2つの流れに沿ったお話をしようかなと思います。
先ずはハードロックの必須バンド、Deep Purpleですが、この「Hallelujah」って全く知らない曲でした。オリジナルアルバムには収録されていないシングル曲で、ラインナップは名盤を送り出した第2期。シャウトするイアン・ギラン、まだ髪フサフサ美青年リッチー・ブラックモアのギターが泣いておりますが、何だかこの曲パープルっぽくないよな、と思ってたら、ソングライターチーム、クック&グリーナウェイという方々の作品だそう。
このコンビが他に残してるのが、アンディ・ウイリアムスの「Home Lovin' Man」とか1968年ユーロビジョンコンテスト代表曲、クリフ・リチャードの「High And Dry」、ホリーズの「Gasoline Alley Bred」とか、まーどれもこれも全然Deep Purpleのイメージから遠いものばかり。というのを踏まえると、かなり曲を自分達の世界に寄せて来てる、とも言えますね。
しかし、これって当時のアーティストの地位の低さを象徴してるのでしょうか。レコード会社の意向でレコーディングされたのかな、と言う事情が伺えて興味深いです。以前このビートクラブシリーズ第8回で取り上げたJackie Lomaxが、「最初はアーティストでなく作曲家としてアップルレコードとの契約を希望していた」理由も、なんとなく分かってきました。つまり、自分で曲を作れても、自作品をレコーディングさせてもらえるかは別の問題。昔、何でヤードバーズの最大のヒット曲が(後の)10㏄のグレアム・グールドマンの曲「For Your Love」だったのか、逆にグールドマン自身でのレコーディングが余り世に広まらなかったのか、とても疑問だったのですが、大人の事情が色々あったのでしょうね。話をパープルに戻せば、長い髪やファッションスタイルに関しては、ハードロック型が既に出来上がってる感のDeep Purple。皆若くてそこそこカッコ良かったですが、やはり、ロバート・プラントのような圧倒的ルックスがいなかったので、女子からの人気はもう一つだったかもしれません。ってあまり良く知らんけど。
さて、同じくハードロック創世記のHumble Pieは、以前、ピーター・フランプトンの話で動画を取り上げましたので、今回はスルーしますね。ロン毛にジーンズのスティーヴ・マリオットもカッコイイし、ロバート・プラントに引けを取らない美丈夫のピーター・フランプトン。でも、声がちょっと甘ったるいかな。マリオットの歌と続けて聴くと、なんか辛いものが、、。
そして、全く知らなかったSteamhammer。むさ苦しいルックスから、勝手にアメリカのバンドかと思ってましたが、イギリスでした。いや、見かけだけでなく、サウンド的にもアメリカ南部の泥臭さが感じられ、イントロでブッカーT&MGsを思い浮かべたんですよね。フレディ・キングのイギリスツアーでバックバンドをしていたそうですが、ジャズロック的ソロパフォーマンスもあったり、ハードロック的でもありプログレ的でもありそう。ってか、元を辿ればどちらもブルーズロックか?ともあれ、このブルージーな「Junior's Wailing」という曲は、Status Quoによってカヴァーされます。
バンドは商業的成功とは無縁でしたが、メンバーの中に、ロッド・スチュワートの名曲「マギー・メイ」の共作者マーティン・クイッテントンがいたり、後にキース・レルフとアルマゲドンを結成するマーティン・ピューという人がいたりと、その辺が好きな人達の間では、知られた存在だったのかもしれません。
では、ここから先は、ソウル&ファンクの話に移りましょう。もう少し後になりますが、ハードロックと共に70年代を彩ったものの一つにディスコ音楽があると思うのですが、私は今まで結構、薄っぺらい音楽とバカにしていました。しかし、ディスコ音楽はソウル&ファンクの流れから生まれたんですよね。
ファンク音楽の先乗り、ワン、トゥー、スリー、フォー、と最初にアクセントが来るところと、ギターもキーボードもホーンも、打楽器のように音を刻むところ等がファンクの基本なのですが、ディスコはそれを継承しているのです。
そんな訳でファンクつーたらジェームズ・ブラウンは避けて通れません。インタヴューでは黒人として誇り高く、堂々と生きる様を見せています。ソウルやファンク音楽が60年代後半の公民権運動と、切り離せない存在であったことは、彼の「Say It Loud, I'm Black and I'm Proud」という曲からも明らかです。
Black is beautifulと声高らかに謳われるようになったのは、この頃からだったのでしょうか?確かにファッションへの影響も強かった様に思います。もう少し後の話ですが、日本の芸能人の間でも、アフロやカーリーヘアが流行ったのも、元を辿ればソウル・ファンクカルチャーに行き着くのではないでしょうか。郷ひろみもアフロにしてたことありましたよね。
と、話が少々外れてしまいましたが、お次のJimmy Ruffinは、モータウンの看板アーティスト、TemptationsのDavid Ruffinの弟です。アメリカよりもイギリスでの人気が高かったとか。同じソウル音楽で括られていても、激しいJBに比べたらお品が宜しいと言うか、白人ウケを狙ったソフト路線という、モータウン色が出ている気がします。お行儀の良いスーツ姿でないとこは、ファッション的に60年代が終わってると見てとれますけどね。勿論良い曲だとは思いますが、ちょっと物足りないかな?Three Dog Nightがカヴァーしてるオーティス・レディングの「Try A Little Tenderness 」なんかと比べても大人しいんですもん。
とか文句言いつつも、Jimmy Ruffin絡みでもう1曲。この「I've Passed This Way Before」はウェザースプーン&ディーンの作品ですが、同チームの曲「What Becomes Of The Broken Hearted」が、彼の最大のヒット曲で、様々なアーティストからカヴァーされています。YouTubeをザッと見たところで、ロッド・スチュワート版、ミック・ジャガーがプロデュースしたクリス・ファーロウ版とか、80年代を代表するブルーアイドソウル、ポール・ヤング版等色々ありましたが、今回はルーサー・ヴァンドロスとボーイ・ジョージのデュエットです。
どうやら米国アポロシアターのメモリアルイベントでのパフォーマンスみたいですね。もしかしたら、テンプテーションズとホール&オーツが共演したライヴと、同じものかもしれません。
と言ったところで、ハードロックとソウル・ファンク、どちらもより刺激的で激しいサウンドへと、進みつつあった時代。アバンギャルドがもてはやされた時代。音楽のみならず、様々な分野で実験的な事が行われた時代でもありました。当然、ファッションにも当てはまるようです。わざと小汚なくすることは、既成概念への反抗を表明することであり、そこに東洋思想やフォークロアといったスパイスを加えられていた様です。そんな中で面白いものが出てこない訳がないでしょ。
実はマンガを殆ど読まない私は、アメトークで初めて「ジョジョの奇妙な冒険」と言う作品を知ったのですが、あれって、アレハンドロ・ホドロフスキーの映画っぽくないですか?後にジョン・レノンが「ホーリー・マウンテン」を大絶賛したとで有名になったホドロフスキーですが、処女作「エル・トポ」が作られたのもこの時代なんですよね。日本でも、寺山修二の「天井桟敷」とか、ピーターが映画「薔薇の葬列」で鮮烈な印象を残したのがこの頃な訳で、テイストは現代にも生き付いているのかもしれませんね。それでは、また次回。
お読み頂きありがとうございました。
↓良かったらどれか1つポチお願い致しますm(__)m
にほんブログ村
- 関連記事
-
- ビートクラブdeロックな話(13)~The Niceとミックが愛したMarsha Hunt (2013/09/30)
- ビートクラブdeロックな話(12)~The Who "Tommy Special" (2013/09/17)
- ビートクラブdeロックな話(11)~ハードロックとソウルのゆくえ~Deep Purple, James Brown etc. (2013/09/03)
- ビートクラブdeロックな話(10)~Thunderclap NewmanとPlastic Ono Band (2013/08/14)
- ビートクラブdeロックな話(9)~Richie Havens, Blind FaithとAmen Cornerアゲイン (2013/08/03)
スポンサーサイト
ハードロックとファンク
今回のビートクラブも面白そうですね。
ディープ・パープルの初期を聴いてみようと思うのですが、
なかなか実現できません。
仰るようにロバート・プラント並みのルックスと押しが、
ディープ・パープルにはなかったのかもしれませんね。
ファンクはあまり聴きませんが、
テンプテーションズの『マスターピース』を聴きましたし、
パーラメントとかファンカデリックの『マゴット・ブレイン』など
も聴いたことがあります。
これらは驚くほど洗練されていて、
ファンク=ジェームズ・ブラウンだけではないのだなあ、感心しました。